これが究極のアイスクライミング!

23時に起きてSPO2を測ると55%/90と酷い状態やった。

威圧感半端ない真夜中のアルパマヨ。

寝起きとはいえ、さすがに低過ぎるので呼吸で調整してみると90%まで上がった。
けど、今後のことを考えて頭痛薬を飲んだ。

当初は、コンテ(同時行動)で登攀しようと話していたけど、空気が薄いので60mロープ一杯に伸ばせない可能性が高い。
しかも、以前書いた通り、コンテの場合、リードの滑落よりもフォローの滑落の方が色々とリスクが高いので支点ではタイブロックを使うことにしていた。

しかし、結局、スタカット(交互行動)の方が、速いのではないか?ってことで落ち着いた。
そして、オレが行動食や飲料等全装で背負い、三ツ堀さんは登攀装備のみの空身でルート開拓に専念するスタイルとした。

毎ピッチ装備を受け渡せば交互にリード出来るけど、受け渡しには荷物を落とすリスクが付きまとうので得策ではないし、それぞれの役割に集中した方がいいと思うし、おれがリードするよりも格段に安全性が増すと思ったのでリードしたい気持ちを押し殺して断念した。

1時半頃、テントを出発した。
まずはダラダラと降り、その後、右手に大きなクレバスを見ながら進む。

トレースもしっかり付いているので迷うことはない。
真っ暗でわからんけど順調に取り付きまでの標高を上げていく。

クレバスを飛び越えると登りが始まる。
これがめちゃくちゃキツい。

登り詰めると大きなセラック帯ぶつかる。
セラックに沿って右上するとセラックの中に雪がた溜まったテラスがあり休憩できた。
ここから簡単なスノーブリッジを越えて1段上に上がる。

その後、セラック沿いに2~3ピッチ左上すると、いよいよ、アルパマヨ取り付き。
脆いセラックやスノーブリッジを越えいよいよアルパマヨに触れる。

空気薄いからペースは遅い。そして、真っ暗で高度感は無い。

一体、何ピッチ登ったんやろ??
60m一杯伸ばせないので、今いる場所がわからない。

だんだんと夜が明けてきた。

「何だこれ?こんな景色見たことない」
今となってはこの言葉やったかは思い出せんけど、三ツ堀さんの言葉に我に返り辺りを見渡す。

辺りを見渡すと薄オレンジ色の素晴らしい景色が広がっていた。
遠くにはペルー最高峰のワスカラン(6,768m)や、チョピカルキ(6,354m)が見える。

最高の景色やった。

そして今いる場所のヤバい高度感が分かって一気に恐怖が襲ってきた(笑)
その後も登攀を続けるが、三ツ堀さんのロープが60mいっぱいまで伸びることはない。

空気が薄く、斜度がキツいからロープ一杯まで登ることが出来ないのだ。
30m程行くとピッチを切る登攀が続く。

すこーしだけ斜度が緩くなり山頂の雪庇が近づいてきた。

山頂が近い証拠。

「片山さんやりましたよ」
震える声で無線が入った。

山頂に着いたんや!そう確信した。

ファイナルコールで泣いてるのがわかってこちらまでつられて胸が熱くなった。

早く登ってやりたいけど、そんな簡単な標高ではなくペースは変わらない(笑)
少しずつやけど三ツ堀さんに近づいている。
カメラは相変わらず冷え切ったままで機能しない。

そして、三ツ堀さんの元に辿り着いた。長かった。めちゃくちゃ長かった。
究極のアイスクライミングを制した瞬間である!

勝手に涙か出たけど、標高が高く空気が薄いので涙はすぐに止まると言うか、止めないと酸欠で気絶しそうになる(笑)

この日の挑戦者は俺たちだけやから貸切、しかも快晴で最高にええタミングやった。

アルパマヨに乗り上げると、あとはピークまで2~30m歩くだけ。
噛み締めるように歩く。

俺は山頂で叫ぶことはないんやけど、今回だけは気分が違っていた。
山頂から叫んだら、コルキャンプ(C2)の数人が答えてくれた。

三ツ堀さん

答えてくれたのは、きっとラウールやろなぁって勝手に思っている。

さて、山頂に長居できないので下山を開始する。

下降地点からの景色。左手の大きな雪庇は山頂の目印。

しかし、下山の懸垂下降も中々ハードで苦労したけど、それでもセラック帯もクレバス帯もショートカット出来たのはありがたかった。

ロープを繋いでヒヴンクレバス帯を抜けると一気にシャリバテが襲ってきて足が進まない。

そして、コルキャンプ(C2)のテン場手前の登り返しで死んだ(笑)
全然登れない。辛過ぎる。

奥にあるテン場、分かりますか?

いろんな記事で読んでいたけどこの登り返しは本当にヤバかった。

テン場に着くとラウールが待っていて、
「TAKA Congratulations. Excellent!」と、讃えてくれた。

この日、ラウールたちはキタラフに取りついていたが、登頂は果たせなかった。

この日は、すでに違う隊が登ってきていた。
その隊のポーターがパックの果物ジュースを飲んでいたので思わず「くれ!」と言ってしまったんやけど、快く全部くれた(笑)

今日はこのままコルキャンプ(C2)で寝て、翌日ゆっくりと下山したかったけど、三ツ堀さんは降りる気満々なのが十分伝わった。
俺も本音はここに居たくない。
事実、標高を下げた方が身体には良く体調は回復する。けど、本当に身体が機能しない。

酷い頭痛で少し休んでから活動することにしたんやけど、とにかく調理した食事が食べたい。
さっき、ジュースを分けてくれた隊がマッシュルームスープを分けてくれたんやけどめちゃくちゃ美味かった。

気力を振り絞りパッキングを済ませ下山を開始した。
まずは60mの懸垂下降。
くの字に屈折しているので30mで切って下降する。

数日前にロープを残置した事もすごく昔の出来事のように感じる。
高い集中力を必要とした時間が過ぎるといつも感じる感覚にニヤけてしまう。

にしても、荷物が重い。全部一度に降ろすので、当然疲れた身体には堪える。
セラック帯も無事下降し、次も60mの懸垂下降。
荷物がなければどうってことない場所も登攀後の身体に重さも加わり堪える。

あとは徒歩でクレバス帯、セラック帯と氷河を越えて行くとモレーンキャンプ(C1)が近づいてきた。
いつも下山が速い三ツ堀さんがモレーンキャンプ(C1)入り口に居た。
膝を痛めたらしい。

そうこうしていると、モレーンキャンプ(C1)側から仙波さんが現れた(笑)
明日、BC入りするはずやったからびっくりした。仙波さんの隊に立ち寄って話してお茶とチョコを分けてくれた。
うまい。めっちゃうまかった。

お互いを讃え、BCに向かった。ところが、モレーンキャンプ(C1)から1時間で着くはずのBCが一向に近づかない。
びっくりするくらいBCが近づかない(笑)

途中、2回ほど休憩してBCに到着。
総行動時間は久々の20時間近かった。

テント建ててすぐにシュラフに潜り込んだ。

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