17日目サミットプッシュ

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※30日の遠征記録なので記事が長いです。読み戻りたいって方は、目次リンクから戻ってください。

クーヒ・ガルモ準備スタート・・・飛行機の手配、ビザなど準備からの記事。

41ヶ国目キルギス入り・・・キルギス入り初日からの記事。

6日目ユーヒナ峰・・・5,100m峰で高度順応した記事。

12日目C3で高度順応・・・6,100mで高度順応した記事。

0時に目覚ましが鳴った。
実は普段から低血圧で起きるのが苦手(笑)
山でもウチでもどこでも嫌々起きる。

気温が低く寒いので起きなくていい理由を探しているけど、そんなもんあるわけない。

なにより俺の成功を楽しみにしている人たちがたくさんいるのに情けない、、、。

クーヒ・ガルモのサミットプッシュは大体3時頃スタートするらしい。
でも、おれは歩くスピードが遅いので、海外遠征では毎回2~3時間早く行動を開始している。
今回も1番。
周りのテントを見渡しても準備に取り掛かっている気配を感じなかった。

真っ暗な道を山頂に向けて歩き出す。

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C3はラズデルナヤ峰山頂から約1~200m離れたところに設営されていて、山頂に向かうにはこの場所から100m程標高を下げてから登り返す。

『サミットプッシュはとても寒かった。』

と、誰もが言っていたのに寒さは全く感じなかった。
8,000m峰でも通用するLOWAのダブルブーツにモンベルのウィンドストッパーという最強装備のお陰。

歩きだして2時間程経ったころ、C3ではヘッドライトの光があちこちで動き出した。
それから更に2時間程経った頃、1番に出発したおれは後ろから来た隊に抜かれだした。

C3を出発してから3~4時間、やっと夜が明けてきた。

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更に1時間くらいかな?
目の前に急登が見えてきた。

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▲左側のツンってなってる山にFIXロープが設置されている。

”ここがみなの言ってた急登のFIXロープ帯か、、、、”
おれは全く怖くなかったけど、他の隊は慎重で若干詰まり気味。

隣にいた登山者と会話しながら登れるくらいの余裕もある。

「おれね、挑戦を終えて下山したらCOKE飲むねん!」

『おれも飲むぞ!それも1Lなっ!(笑)』

って、2人で笑った。
FIXロープ帯の急登を終えると、すっかり夜が明けていた。

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次の小山の側面を巻き上げるように進む。

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C3を出てからペースが遅すぎる、、、靴と服、荷物が重い、、、。
高山病を発症している感じはないのに身体が重くてペースが上がらない。
そして何より、暑い、暑すぎる、、、。

何とか、小山を登りきった、、、。

その先は長~~いトラバース。

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そして、その先がクーヒ・ガルモの本峰らしき山容。

遠すぎる、、、。

悩んだ結果、荷物の一部を雪の中にデポすることにした。
デポした荷物は撮影用に持ってきたRowLowMountainWorksのザックと手袋(アウター)。
※RowLowのザックを持って上がりたかったけど登頂を達成するための苦渋の決断でした。すいません。

たったこれだけ。

たったこれだけやと1kgもない。
普段なら、なんてことないこの重さの荷物でも、減らしたいくらい身体が疲れ切っていた。

ピッケルで雪を掘って、ザックと手袋を埋めた。

なが~~いトラバースを30分掛けて歩くと本峰らしき山に取りつく。

地味に堪える山を登っていく。

暑い、、、。

1時間程登った頃、折り返してきた隊が俺にこう言った。

『そのダウンを脱げ!俺たちを見ろ!暑すぎるからこんな格好だろ?おまえも脱がないと山頂には行けないぞ!』

荷物をデポしてからず~~~っと考えていたこと。

服を脱ぎたい!

でも、ここは約7,000mの高所。
天候が急変してガスが発生したら、太陽を遮り、あっという間にマイナス気温になって身体に張り付いた水蒸気が一瞬で凍る。
そうなると、一気に体温を奪われ、命も奪われるので絶対にやってはダメなこと。
実際、数日前にC3手前で体験しているし、1,000m上昇すると気温はマイナス6℃下がる。
6,100mのC3でも寒かったのに、この場所で同じことが起こったら間違いなく死ぬやろな、、、。

C3から山頂への稜線も技術的に困難な場所はないけど、”体力、天候(特に風)が成功のカギを握る。午後は雲が沸きやすく、晴天時でも朝方には30m/sを越える強風が吹いて前進困難に陥り撤退する者もいる。”と紹介されている。

いろんなことを考えながら、騙しだまし、ここまで来たけど、隊の言葉で決心がついた。

脱ごう!

早速、モンベルのウィンドストッパーを脱いで風で飛ばないように石を乗せた。
身体が軽いし涼しい。

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出塁ランナーがリード距離を稼いでピッチャーと心理戦を行う感覚ってこんな感じかな?って思う。
”天候が急変しても、すぐに戻ってきて服を着る時間を確保できる距離”
そんなことを常に意識し天気が急変しないよう祈りながら山頂を目指した。

気持ちは前に行きたくても、すでに身体の疲労が蓄積しているのか、ペースが全く変わらない。
ザックや手袋を埋めて、命に係わるウェアを脱いで。
上司や同僚に助けてもらって、たくさんの企業にご支援してもらって、たくさんの方に応援してもらって、たくさんのお金や時間を使って。

山頂を踏まずに帰れない!!

でもそんな思いのすぐ後に”もっと足が痛くなって登れなくならないかな、天候が悪化して登頂できなかったらいいのに”って登頂出来なかった時の言い訳を考えている弱い自分がいた。

葛藤しながら、一歩、、、また一歩、、、ただ前に足をだして登っていると、

『終わったら、COKE飲むんだろ?山頂は近いぞ!』

FIXロープ帯を一緒に登ったあいつ(名前忘れた、、、)が山頂からの折り返しですれ違いざまに励ましてくれた。
でも、C3を出て10時間以上歩いて疲れ切ってるおれは頷くことしか出来んかった。

”辛すぎる、、、キツい、、、山頂どこやねん、、、。”

そんなことしか考えていなかった。
一足先に登頂を果たし北海道隊の彼が言っていた。

『キルギスの国旗が見えるまで全部偽ピークですよ!』

でも、いくら登っても旗が見えない、、、。
これを登ってもまだ見えへんのやろな、、、帰ろう、、、。

っ!!

見えたっ!

国旗やっ!

遠くに見える山の先に赤い何かが見る。
間違いなく国旗っ!
でも、走れるわけでもなく国旗が見えてから更に30分掛かった、、、。

そしてっ!

2019年8月8日13時21分(日本時間16時21分)
天候が悪化することもなく7,134mの山頂に立つことができた。

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この軽装備、ヤバいですよね?
上下メリノウールのインナーのみ、、、。

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もっと山頂に居たかったけど帰らないと危ない。
名残惜しいけど急いで下山を開始。

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▲タジキスタン側の山々

帰りは約6時間。
C3から山頂まで往復約19時間。
過去最高の行動時間やけど、我ながらこの標高でよく動き続けられたと思う。

C3のテント入ると食事を作る気力もなく、気が付いたら翌朝やった。

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