待ってろ!マッターホルン!

4時から朝食。
今回は、コーンフレークやハム、チーズ、パン、ヨーグルトなど自分で取るスタイル。

4時20分ガイド組からスタート。
ガイドレスは最後尾スタートやし、取り付きのFIXロープで渋滞するから慌てずしっかり準備することにした。

今年は山の条件が悪い。
フランスのガイドは登山を中止していることもあり、マッターホルンのガイド登山は7組で大した渋滞もなくスタートできた。

取り付きのFIXロープを登ると案の定、道がすごく分かりづらくルーファイが難しい。
間違えると崩れやすいガレ場や、砂を被ったスラブの登りずらいルートになる。

踏み跡は無数にあって、スリングもあちこちにあって、どこが正解の道なのか判断が難しい。
他のガイドレス組と道を教え合いながら登る。

落ちたら止まらん

すぐに夜が開けて、辺りが見渡せるようになると高度感が一気に増す。
無心で登っていくと、ソルベイ小屋が見えてきた。

ソルベイ小屋が見えた

”あそこまで後1時間掛かるかな?”そんなことを考えていた時、

「あぁっ!」

ハッと、そっちを見るとみゆきちゃんが乗った岩が崩れて落ちる瞬間やった。
間一髪無事やったけど、更にその後の動きが鈍くなった。

”大丈夫か?付いて来れるか?”

気が気ではない中、登攀を続けソルベイ小屋の直下に来た時、青いザックが視界の片隅に見えた。
昨日亡くなった方のザック。

その瞬間、緊張が途切れ一気に恐怖が押し寄せた。

みゆきちゃんの動きは鈍い。
みゆきちゃんを落とせないけど、おれも落ちられない。

”やっぱこれ以上はやめとこ”そう考えて、

「ソルベイ小屋までにしよう」と伝えた。

ソルベイ小屋(約4,000m)に9時半頃到着。

やっと休憩できる

計画よりもかなり遅れている。
けどここまで来ると、欲が出て以前のあの場所まで行こうって思い、持ってきた行動食を食べた。
みゆきちゃんは登れば登るほど酸素の薄さを感じて辛かったらしい。

ソルベイ小屋から上を見上げるとあの日引き返したことを思い出した

もう少しだけ登ろか。

その場所に着くと、さらに欲が出て、もう少し進もうってなった。
けど、本来、コンテ(同時行動)で進む道のりを、スタカット(交互行動)にしたことで時間が倍掛かりペースが悪い。

これくらい確保なしで登らんと時間が掛かかりすぎる

最後のFIXロープ帯が見えてきた。

「これを登れば山頂や!」

しかし、時間を見ると14時前。
到底、今日中の下山は難しい。

「残念やけど、ここまでにしよう。」

その場所はFIXロープをあと1本登り、なだらかなチャンピオンロードを登れば山頂って場所。

懸垂下降の準備をしていると、フランスのガイドレスペアが降りてきた。
動きの悪さが気になるけど、こっちもギリギリやし構ってられへん。

サッと降りようとしても、滑落死亡事故や落石もありスタカット(交互行動)を多用した。

18:30ソルベイ小屋着。
小屋まで4時間掛ったけど、お互い無事ならそれでいい。

このままソルベイ小屋に泊まることにした。
今年は登山者が少ないので貸し切りかなって思ったら、韓国人が4人居た。
ソルベイ小屋は緊急時のみ宿泊可能なんやけど、韓国人はソルベイ小屋を前泊前提で利用するから評判が悪い。

2018年に来た時も、地元ガイドと揉めていた。

ソルベイ小屋は緊急時以外使用禁止!

”面倒やなぁ”って思っていたら、寝るスペースを空けてくれたり、頭痛が酷い俺に薬を分けてくれたり。
その後、かなり遅れてフランスのガイドレスペアも小屋に到着。

小屋には毛布やマットがあり快適に寝られた。
トイレは開放的で便座の蓋を開けると下にダイレクトに垂れ流すスタイル。
激臭だと聞いていたが全然臭くなかった。むしろ外に垂れ流されるため外の方が臭かった。

そして、気が付けば眠っていた。

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