生きて帰るということ!

翌朝、前日の行動食の残りと、水500mlで下山することになる。
ソルベイ小屋からの下山は懸垂下降から始まる。

クライムダウンでも降りられるけど、朝一ということもあり懸垂下降って決めた。

懸垂下降後のロープ回収時に浮石を引っ掛けたらしく、こぶし大のデカい石を左肩に受けてしまった。
足元が狭くて大きく避けることができず、頭に当たるのを躱せただけマシ良かったやけど、めちゃくちゃ痛い。

まもなく、韓国人たちが追いたので、一緒に下山することになった。

今日もヘリが飛び交い救助している。

ソルベイ小屋から4時間、ヘルンリ小屋まで下山することができた。

下山後は韓国人たちとコーラで乾杯した。
空腹に耐えかねて再びパスタを注文。
コーラと合わせて56CHF(約7,600円)。

値段の高さに笑いが出てくる。

少し休んで、ツェルマットに向けて出発したんやけど、ゴンドラ代の節約と観光を兼ねて、歩いて帰ることにした。

平地まで来ると鈴を付けた牛の放牧などスイスらしい風景が広がっていた。

そのルートは、マウンテンバイクやハイカーが歩くのでカフェがあった。
その前を通りかかった時、店の人が、

「あと2分でヘリが来るわよ」って教えてくれたから休憩がてら見ていくことにした。

その人がツェルマットへの道を教えてくれたんやけど、流石に疲れてきたから、「ヒッチハイクしよっ」って提案した。

そうこうしていると後ろから車が来た。
ヒッチハイク未経験のみゆきちゃんが車を止めるはずやったのに、直前になると芋ってやらへん(笑)

仕方なく、俺がヒッチハイクしたら止まってくれた。

「ツェルマットまでは行かんけどフーリまで行く」って言うから乗せてもらった。

助手席に乗っていた人が、「荷台は揺れるから、こっち座れ」ってみゆきちゃんに席を譲ってくれた。

芋ったくせに楽しんどる

フーリのゴンドラ駅は一部工事中なんやけど、そこの関係者やった。
その仲間たちが「楽しめたか?」って笑ってた。

疲れたのでフリーからゴンドラで帰ることにした。
ゴンドラに並んでいると再びフランスのガイドレスペアに出会った。

ツェルマットに着くと、「一緒にアイスを食べないか」と誘ってくれた。
いろいろ話を聞くと彼らは山岳部仲間らしく、年配の方の長年の夢がマッターホルンに登頂することやったらしい。

そんな彼らは山頂から俺らの姿が見えていたんやけど

「あの場所で引き返す判断をしたのは懸命やった。素晴らしい。」って言ってくれた。

正直言うと登頂するに越したことはないし登頂したかった。

チーム力が低いと言われればそれまでやけど、あの場所で帰る決断をしたのは、間違ってない。
20時間近い登攀の中で俺らにしか分からんドラマがあった。
だから、無事帰ることが大切やと思うし、

何よりあの場所まで行けただけでも気持ちが満たされた。

俺たちの最高地点

ある人の言葉を借りると、

”登頂”は結果に過ぎない。
登頂に”挑む”
という体験にこそ価値がある。
あっさり登れてしまうよりも、ずっとずっと大きく価値のある体験した。
一生心に残る体験を。

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