今日はC1設置を目標に行動する。

とはいえ、一度ですべての荷物を上げることはできない。今日も荷揚げを兼ねながら、少しずつ標高を上げていく計画だ。
昨日見つけた渡渉ポイントから川を渡る。
ルートが分かっているだけで気持ちは全然違う。取り付きまではあっという間だった。

まずは昨日デポした「窪んだデポ地」へ向かう。
昨日よりも順調なペースで到着し、パッキングを見直したあと、ドローンを飛ばしてルートを偵察する。
まず最初のポイントは、オレンジと灰色に分かれた二色のルンゼ。
左側のオレンジ色のルンゼが弱点とみて取り付くことにした。
一見すると何でもない斜面だが、標高は4,000mを超えている。
冬靴を履き、重い荷物を背負っているだけで、平地とはまったく違う感覚で緊張感がある。

さらに進むと、チクチク草の群生地帯が現れた。
これが想像以上に厄介だった。
草は簡単に衣類を突き抜け、肌に刺さる。

とにかく痛い。
ようやく抜けたところでケルンを積んだ。

これは自分たちの目印でもあり、万が一レスキューが入ったときの目印にもなる。
要所ごとにケルンを積みながら進んでいると、仲間が声を上げた。
「ケルンがある!」
近づいてみると、明らかに人が積んだものだった。

シウラ・グランデ北稜は、当時の初登ルートであるものの、現在は氷河の後退による地形の変化で、同じラインをたどることは難しくなっている。
オレたちは弱点を探しながらルートを切り拓いていたつもりだった。
それでも結果的に、先人たちと同じラインを歩いていたことに、何とも言えない感慨が込み上げてきた。
さらに登る。
しかし、仲間が立ち止まった。

「ダメだ。進めない。」
仲間は大岩壁の直下まで登っていたため、その先の様子が見えない。
一方、後方にいたオレは周囲を見渡すことができた。
すると、約10m間隔で横一列に並んだ3つのケルンが目に飛び込んできた。

「これは何か意味があるはずや。」
そう直感し、岩壁の右端を右上してカンテを回り込んでみる。
すると──
ルートがあった。
「こっちにルートがある!」
思わず大声で叫んだ。
3つのケルンは、このルートへ導くための目印だったのかもしれない。
その瞬間、完全に道がつながった。
気付けば、氷河末端の滝よりも高い位置まで登ってきていた。

その後もケルンを積み、既存のケルンを見つけながら高度を上げていく。
しばらく登ると、氷河の融水が流れ落ちる小滝が現れた。
右岸は岩が立ち、このままでは登れそうにない。
しかし、小滝から流れ出る川を渡渉すると、左岸に登れそうなラインが見えた。

左岸へ渡って登り、行き詰まれば再び右岸へ渡る。

そんなルートファインディングを何度も繰り返しながら、一歩ずつ高度を稼いでいく。
それでも、なかなか標高5,100mを超えない。
夕方になると雨や雪が降りやすいことは、この数日で分かっていた。
行動限界の時間も決めている。
「せめて、この滝だけは越えよう。」
そう決めて最後のひと踏ん張り。

何とか滝を越えたところで荷物をデポし、この日の行動を終了した。
数日前に越えた順応の峠が効いてきたのか、体の調子は驚くほど良かった。
ただ、その夜は小雨が降り続き、ベースキャンプは遠征中でも特に寒い夜となった。
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